通算1324勝、そして1180敗。加藤一二三氏に聞く「負けパターン」の法則
加藤一二三さん9月毎日更新 Q2. 「負けパターン」のようなものはあったのでしょうか
負けパターンを意識し、中原名人を破った戦略
あわてないためにはそれなりの対策が必要です。印象深いのは、名人獲得のかかった中原誠名人との一戦ですね。
名人戦は2日制で持ち時間が9時間。私は、いわゆる「長考型」で長考に長考を重ねるため、必然的に残り時間が切迫しがちです。ですから、私は決断を比較的早くして、持ち時間をなるべく残す作戦で挑みました。当たり前ですが、残り時間がたくさんありますとあわてないで落ち着いて戦えますでしょ。
しかし、勝負事は一筋縄ではいかないものです。中原名人は戦い方が非常に巧妙な方ですから、持ち時間の9時間のうち、結局残り1分にまでなってしまったんです。
たくさん時間を使ったことにはなりましたが、この対局では残り1分の中で「勝つ手」を見つけることができまして、名人になることができました。
結果的に最後時間はギリギリになりましたが、「残り時間を多く残そう」という心構えが成功したと思います。残り1分で勝利の決め手を見つけることができたのは、やはり決断を早くしていたからでしょう。
「負けパターン」という質問ですが、持ち時間が決まっている将棋では長く考えすぎてしまうと後々あわててしまいます。
こちらがノリにノッて、絶好調のときには残り1分でも決定づける一手がひらめくことはありますが、多くの場合は焦りが負けにつながりやすくなると思いますね。だからこそ、あわてないで落ち着いて戦うことはとても大切です。
明日の第三回の質問は「Q3.“長考派”として知られていますが、「じっくり考えること」のメリットは何ですか?」です。
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